「HSC」というのは「Highly Sensitive Child」のことで、「ひといちばい敏感な子ども」と訳されます。
ささいなことに敏感で、共感力の高い性格です。
様々なことを深く考える傾向がありますので、刺激に圧倒されやすい「繊細さん」「敏感すぎる子」と言われます。
アメリカの心理学者、エイレン・N・アーロン博士が、「HSP」(Highly Sensitive Person:ひといちばい敏感な人)と共に提唱し、全世界に人々に共感されて広まりました。
刺激が多く、様々な理不尽なことや、予測不能なことが起こる学校生活は、このような傾向があるHSCのお子さんたちには、そうでない人たちには想像のつかないところで気疲れするものとなります。
HSCの特徴は?
日常生活の中で光や音など環境からの刺激を受けた時、HSCは敏感に反応します。これは生まれつき背が高かったり、視力がよくなかったりする人がいるように、生まれつきの特徴です。
HSCの特徴は以下の4つに分けて捉えられています。(アーロン博士より)
- 様々なことを深く考える
- 音、光、暑さや寒さ、痛み、雰囲気などの刺激を過剰に受けやすく、敏感に感じ取る
- 人の気持ちに反応し、強く共感する
- 光や音、匂い、人の声の調子、視線など、様々なことによく気が付く
HSCは精神医学の基準、概念とは異なるため、精神科を受診してHSCと診断されるということも、HSCとして治療が行なわれるということもありません。
HSCは心理学者が提唱した概念で、診断名ではないのですが、HSCの特徴があって、生きづらさがメンタルの不調につながる場合は、その生きづらさについて診断・治療が行われるということがあります。(どちらにしてもHSCの診断というものはありません。)
ただ、このような生まれ持った特徴をもつお子さんがいることを知っているということは、不登校のお子さんを理解する上で助けとなることがあります。
HSCと不登校
アーロン博士の調査では、割合的に子どもたちの5人に1人はHSCであるということです。
20%がHSCということはかなりの高確率ですが、敏感でもなく繊細でもない80%の子どもたちと過ごす学校生活では、刺激が多く、気配りをしている内に疲れ切ってしまいます。
いじめられたり、悪口を言われたりするようなことが特になくても、普通に生活しているだけでストレスがたまる、というのは、80%の多数派の子どもたちや先生方にはピンとこないかもしれません。
ですが、大勢の声や雑音、雰囲気…例えば自分が怒られているのではなくても、先生が他の子に向かって大きな声を出して叱っている、というような状況でもストレスを溜めていきます。
このように生きづらさを抱えながら、高学年になると、思春期の心の揺れと、HSCの特徴である繊細さや敏感さが相まって、益々、生きづらさを感じるようになり、不安でいっぱいの学校生活になっていきます。
先生に気持ちを訴えても「気にしすぎ」と言われ、「気の持ちよう」と言われがちです。
そこで多くのHSCのお子さんたちは、集団についていこうと過剰に適応しようとがんばります。
適応しようとする中で張りつめて生活をすることになります。
他の人の視線や批判を気にし過ぎると、疲れ切ってしまい、学校生活を避け、仲間関係を絶ってしまうことがあるのです。
特に思春期には、他人の目を非常に気にして自分を否定されることを嫌います。
張りつめて生活する中、何らかのきっかけで不安が増大すると、自分が傷つくことを恐れて家庭に引きこもる可能性が高まります。
不登校の改善のために
お子さんがHSCの自分の気質を知ること
例えば嫌だな、と感じることがあっても、周囲は平然としているのを見ると、自分の感じ方はおかしいのかもしれないと不安になります。ですが、感じ方は人それぞれであり、自分の繊細は生まれ持った気質であると知るだけで、随分と楽になります。
お子さんが「自分は自分」と思えること
「気にしすぎ」だと言われると、繊細さはいけないもののように感じるかもしれません。ですが感性豊かで共感力が高く、良い面もたくさんあります。そのままの自分を大事に、「自分は自分だ」と思えるように周囲の大人がサポートしていきましょう。
恐らく不登校は、特定の出来事だけが原因ではなく、ひとつのきっかけに過ぎないと考えられます。ストレスの元を理解するために、とにかくお子さんの話を聴き、お子さん自身を受け入れることです。
親に受け入れられる過程で、お子さんは自分自身を受け入れられるようになっていきます。
おわりに
「HSCの敏感さ、繊細さは、生まれ持った気質である」という概念は、「気の持ちよう」「気にしないように」と言われてきたお子さんにとっては、自分が気にしすぎているのではなく、生まれ持った気質なのだと分かり、安心感を持てるのではないでしょうか。
繊細さ、敏感さは、疲れやすさ、生きづらさにつながり、不登校になりやすい特徴であるとは言えますが、見方を変えれば、HSPの繊細さは素晴らしい特徴であるとも言えます。
研ぎ澄まされた感性で、毎日の普通の生活をていねいに味わい、感性豊かな人生を送ることができます。共感力が高いため、人の気持ちを察することができます。
【参考文献】 エイレン・N・アーロン著 明橋大二訳. ひといちばい敏感なあなたが人を愛するとき. 青春出版社, 2020
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