数学が苦手なお子さんは中学、高校とも学年が上がっていくごとに増えていきますよね。今回は高校3年生の数学IIIの微分法ついて書いていきたいと思います。数学IIで学んだ「微分の考え」の内容を発展させた内容になっています。理系の入試には必ず出てくる内容なのでしっかりと点を取れるようにしていきたいですね。
あすなろには、毎日たくさんのお悩みやご質問が寄せられます。
この記事は数学の教科書に基づいて高校生のつまずきやすい単元の解説を行っています。
文部科学省 学習指導要領「生きる力」
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導関数
ここではまず数学Ⅱで学んだ微分が可能な条件から、関数の和・差・積・商、合成関数や三角関数、指数関数などのさまざまな関数の導関数が出てきます。
関数の連続性と微分可能性
関数には、微分可能な関数と微分不可能な関数があります。関数が微分可能かどうか判断するために、まずはその関数が連続であるかを判断する必要があります。関数の連続とは、要するにグラフ上で関数がつながっているかどうかです。式を使って表すと、
\( \displaystyle \lim_{x \to a} f(x) = f(a) \)が成り立つとき、\(f(x)\)は\(x=a\)において連続。
これは、ある点で連続かどうか判断するためには、その関数のその点での値とその点に限りなく近づけたときの値が同じになればいいということです。ある点で微分可能であるためには、まずその点で関数がつながっていなければならないので連続である必要があります。
関数がある点で微分可能であるためには、その点で関数がつながっているだけでなく、滑らかにつながっている必要があります。式を使って表すと、
\(
\displaystyle f'(a) = \lim_{h \to 0} \frac{ f(a+h) – f(a)}{h} = \lim_{x \to a} \frac{ f(a) – f(a)}{x-a}
\)
が存在するとき、\(f(x)\)は点\(x=a\)において微分可能。
これは関数\(f(x)\)のグラフがなめらかであれば、点\(x=a\)のまわりを直線で近似でき、微分係数が存在するためです。
関数の連続性と微分可能性の関係で気を付けなければならないのは、関数が微分可能であるならその関数は連続ですが、関数が連続だからといってその関数は微分可能だとは限らない、ということです。
関数の和・差・積・商の導関数
微分にも関数の和・差・積・商の微分の公式があります。和や差の導関数はとても簡単で、それぞれの関数を別々に微分することで導関数を求めることができます。
\(
\displaystyle ( a \cdot f(x) + b \cdot g(x) )’ = a \cdot f'( x ) + b \cdot g'( x )
\)
積の導関数は、ライプニッツルールとも呼ばれる重要な公式です。
\(
\displaystyle \{ f(x) \cdot g(x) \} ‘ = f'( x ) \cdot g( x ) + f( x ) \cdot g'( x )
\)
形としては、2つの関数の 片方微分\(×\)片方そのまま の和という形になっています。この公式はかなりよく使う公式なので、しっかりと覚えて使えるようにしましょう。
積の微分に加えて商の微分の公式もあります。この公式は積の微分公式から導出することができるので教科書等に載っている公式の証明を見ておくようにしましょう。
\(
\displaystyle ( \frac{f(x)}{g(x)} )’ = \frac{ f'(x) \cdot g(x) – f(x) \cdot g'(x) }{ \{ g( x ) \}^2}
\)
形としては、分母の関数が2乗され、分子は積の導関数の形になっています。この公式もよく使いますが、積の微分の微分公式から導出できるので、忘れてしまったら積の微分公式から導出できるようにしておきましょう。
合成関数の導関数
関数の和・差・積・商の導関数が求められるようになったら、次は合成関数の導関数を求められるようになりましょう。合成関数の微分の公式は形はとても簡単です。
\(
\displaystyle \{f( g(x) )\}’ = f'( g(x) ) g'( x )
\)
この公式を見ると合成関数の導関の微分はそれぞれの関数の微分の積の形になっていて、覚えやすそうに見えますね。確かに公式自体は簡単な形で覚えやすいですが、この合成関数の微分は実際の関数で計算しようとすると、計算が大変なことが多いので計算ミスに気を付けるようにしましょう。
例題
微分についての例題をいくつか紹介していきます。
例題 (微分可能性)
関数\(y=|x|\)は\(x=0\)において微分可能か判断せよ。
解答
\( \displaystyle \lim_{h \to 0} f(h) =0 = f(0) \)より、\(x=0\)で連続です。
次に\(h\)を正から0に近づけると\( \displaystyle \lim_{h \to +0} f(h) = 1 \)、負から0に近づけると\( \displaystyle \lim_{h \to -0} f(h) = -1 \)となります。
よって、極限値は存在しないので微分不可能です。
例題 (和・差・積・商の導関数)
次の関数の導関数を求めよ。
①\(y = 3x^2 – 7x + 5\)
②\(y = \frac{ 5x }{ x^2 – 2x +1 }\)
解答
①
\( \displaystyle y’ = (3x^2 – 7x + 5)’ = 6x – 7\)
②
\begin{eqnarray}
\displaystyle y’
&=& (\frac{ 5x }{ x^2 – 2x + 1 })’ \\
&=& \frac{(5x)’ ( x^2 – 2x +1) – 5x( x^2 – 2x + 1)’ }{ ( x^2 – 2x + 1)^2 } \\
&=& \frac{5 ( x^2 – 2x + 1) – 5x( 2x – 2) }{ ( x^2 – 2x + 1)^2 } \\
&=& \frac{ -5x^2 + 5 }{ ( x^2 – 2x + 1)^2 } \\
&=& \frac{ -5(x-1) }{ (x-1)^4 } \\
&=& \frac{-5}{( x-1 )^3}
\end{eqnarray}
例題 (合成関数の導関数)
\( \displaystyle y = \sqrt{x^2 + 1} \)を微分せよ。
解答
\(u = x^2 + 1\)とおくと、\(y=\sqrt{u}\)となり、\( \frac{du}{dx} = 2x , \frac{dy}{du} = \frac{1}{2 \sqrt{u}} \)であるので、
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{ dy }{ dx } &=& \frac{ dy }{ du } \cdot \frac{ du }{ dx } \\
&=& \farc{1}{2 \sqrt{u}} \cdot 2x = \frac{x}{ \sqrt{x^2 + 1} }
\end{eqnarray}
導関数攻略法
微分は学習する前はすごく難しい印象を受けると思いますが、いざやってみると微分すること自体は計算するだけなのでそんなに難しくありません。公式の証明・成り立ちを理解し、計算ミスに気を付けながら公式通りに計算するだけです。ここで一番差がつくのは微分可能性の部分です。なのでここでは、教科書などを見て自分なりにノートにまとめながら整理して、微分可能性の部分の理解に時間をとることが人よりも点数を伸ばすことにつながります。