数学が苦手なお子さんは中学、高校とも学年が上がっていくごとに増えていきますよね。今回は高校数学の中でも数学IIIの極限について書いていきたいと思います。この分野の問題は極限の計算問題がほとんどですが、極限を求めるために少し変わった式変形をすることがあります。この分野の内容は微分や積分の内容と深く関わってくるのでしっかりと計算できるようにしましょう。
あすなろには、毎日たくさんのお悩みやご質問が寄せられます。
この記事は数学の教科書に基づいて高校生のつまずきやすい単元の解説を行っています。
文部科学省 学習指導要領「生きる力」
=もくじ=
- 1 関数とその極限
- 1.1 分数関数と無理関数
- 1.2 逆関数と合成関数
- 1.3 関数値の極限
- 1.3.1 ①\( \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{sin x}{x} =1 \)
- 1.3.2 ②はさみうちの原理
- 1.3.3 ③\( \displaystyle f'(a) = \lim_{x \to a} \frac{f(x)-f(a)}{x-a} = \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h)-f(a)}{h} \)
- 1.3.4 ④\( \displaystyle \lim_{x \to \infty} (1+\frac{1}{x})^x =e , \lim_{x \to 0} (1+x)^{\frac{1}{x}} =e\)
- 1.3.5 ⑤\( \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{log(1+x)}{x}=1 \)
- 1.3.6 ⑥\( \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{e^x – 1}{x} = 1 \)
- 2 例題
- 3 関数の極限攻略法
関数とその極限
関数でも数列と同様に「限りなく近づく」という極限の考えを導入することができます。\(x\)が\(a\)以外の値をとりながら\(a\)に限りなく近づけたとき、関数\(f(x)\)がある値\(\alpha\)に近づくとする。このとき、「\(x\)が\(a\)に近づくとき、\(f(x)\)は\(\alpha\)に収束する」といい、この\(\alpha\)を極限値や極限といいます。このとき、数列の極限のように\( \displaystyle \lim_{x \to a} f(x) = \alpha \)と表します。また、関数の極限にも収束せず、発散する場合があります。\(x\)を\(a\)に限りなく近づけたとき、\(f(x)\)が限りなく大きくなる場合「\(f(x)\)は正の無限大に発散する」といい、\( \displaystyle \lim_{x \to a} f(x) = \infty \)と表します。\(x\)を\(a\)に限りなく近づけたとき、\(f(x)\)が限りなく小さくなる場合「\(f(x)\)は負の無限大に発散する」といい、\( \displaystyle \lim_{x \to a} f(x) = – \infty \)と表します。収束せず、正負の無限大にも発散しない場合は、「極限はない」といいます。
分数関数と無理関数
分数関数は数列の極限を考えるときに基本となる関数です。数列の極限と同じように不定形となる場合は不定形でない形に式変形してから極限を考えます。関数の極限は数列の極限と違い、\(x \to \infty \)とは限りません。また、無理関数の場合も数列の極限と同じように分母や分子を有理化したりして、不定形を解消する必要があります。\(x \to \infty \)とする場合は式変形をするときに符号に気を付ける必要があります。
逆関数と合成関数
逆関数
関数\(y=f(x)\)は\(x\)の値が決まると\(y\)がただ一つに決まります。逆関数とは\(x\)と\(y\)の対応関係を逆にする関数です。つまり、\(y\)の値が決まると\(x\)がただ一つに決まります。\(y=f(x)\)を\(x\)について解いて\(x=g(x)\)となったとき、\(x=g(x)\)を\(f(x)\)の逆関数といい、\(f^{-1}(x)\)と表します。グラフ上での特徴として、逆関数は\(y=x\)に関して対称なグラフになります。
合成関数
2つの関数\(y=f(x) , z=g(y)\)があり、\(f(x)\)の値域が\(g(y)\)の定義域に含まれているとすると、\(z=g(f(x))\)を\(f(x)\)と\(g(y)\)の合成関数といい、\((g \circ f)(x)\)と表します。この合成関数には押さえておくべき性質がいくつかあるので紹介しておきます。
①一般には交換法則は成り立たない。
\( (g \circ f)(x) \neq (f \circ g)(x) \)
②結合法則が成り立つ。
\( (h \circ (g \circ f))(x) = ((h \circ g) \circ f)(x) \)
③\(f(x)\)とその逆関数の合成関数は\(x\)になる。
\( (f^{-1} \circ f)(x) = (f \circ f^{-1})(x) = x \)
④\(f(x),g(x)\)がそれぞれ逆関数をもつとき、
\( (g \circ f)^{-1} (x) = (f^{-1} \circ g^{-1})(x) \)
上の性質にもあるように合成関数は交換法則が一般に成り立つわけではないので、\(f\)と\(g\)の順序を間違えないように気を付ける必要があります。
関数値の極限
この単元では三角関数等の他の関数の極限についても考えます。よく使う公式を紹介するのでその証明と一緒に身につけるようにしましょう。
①\( \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{sin x}{x} =1 \)
三角関数を含む不定形の極限を考えるときによく使う公式です。この公式が使えるように式変形することが多いです。
②はさみうちの原理
はさみうちの原理とは\( f(x) \le g(x) \le h(x) \)のとき、\( \displaystyle \lim_{x \to \infty} f(x) = \alpha \)かつ\( \displaystyle \lim_{x \to \infty} h(x) = \alpha \)ならば\( \displaystyle \lim_{x \to \infty} g(x) = \alpha \)になるという法則です。直接極限を求めることができないときに使います。
③\( \displaystyle f'(a) = \lim_{x \to a} \frac{f(x)-f(a)}{x-a} =
\lim_{h \to 0} \frac{f(a+h)-f(a)}{h} \)
微分係数の定義を使って解くときに使います。
④\( \displaystyle \lim_{x \to \infty} (1+\frac{1}{x})^x =e , \lim_{x \to 0} (1+x)^{\frac{1}{x}} =e\)
\(1^{\infty}\)の不定形の極限を求めるときに使います。
⑤\( \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{log(1+x)}{x}=1 \)
対数関数を含む不定形の極限を求めるときに使います。
⑥\( \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{e^x – 1}{x} = 1 \)
指数関数を含む不定形の極限を求めるときに使います。
例題
極限についての例題をいくつか紹介していきます。
例題 (はさみうちの原理)
\( \displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{sin x}{x} \)を求めよ。
解答
\( -1 \le sin x \le 1\)であり、\(x \to \infty\)を考えるので\(x \neq 0\)であるので、
\( \displaystyle -\frac{1}{x} \le \frac{sin x}{x} \le \frac{1}{x} \)
よって、\(\displaystyle \lim_{x \to \infty} (-\frac{1}{x}) = 0 , \lim_{x \to \infty} \frac{1}{x} = 0 \)より、
\( \displaystyle 0 \le \lim_{x \to \infty} \frac{sin x}{x} \le 0 \)
よって、
\( \displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{sin x}{x} = 0 \)
例題 (関数の極限)
次の極限を求めよ。
①\( \displaystyle \lim_{x \to 1} \frac{x^2 – 1}{x-1} \)
②\( \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{tan x}{x} \)
解答
①
\(
\displaystyle \lim_{x \to 1}\frac{x^2 – 1}{x-1} = \lim_{x \to 1}\frac{(x-1)(x+1)}{x-1} = \lim_{x \to 1}(x+1)=2
\)
②
\(
\displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{tan x}{x} = \lim_{x \to 0} \frac{1}{x} \cdot \frac{sin x}{cos x} = \lim_{x \to 0} \frac{sin x}{x} \cdot \frac{1}{cos x} = 1 \cdot \frac{1}{cos 0} = 1
\)
関数の極限攻略法
この単元で出てくる問題は、ほとんどが計算問題です。しかし、他の単元ではやらないような式変形をするので練習問題をこなしてなれるようにしましょう。関数の極限の分野で公式がいくつかあり、使うことも多いので証明と一緒に押さえるようにしましょう。また、合成関数のように使うときに注意が必要なものもあるので練習問題等で間違えたりしたミスはメモしておくといいと思います。