数学が苦手なお子さんの数は中学、高校とも学年が上がっていくごとに増えていきますよね。今回は高校2年生の数学の中でも三角関数について書いていきたいと思います。三角関数はつまずく人が多い単元なので基礎の部分からじっくりと理解していきたいですね。
あすなろには、毎日たくさんのお悩みやご質問が寄せられます。
この記事は数学の教科書に基づいて高校生のつまずきやすい単元の解説を行っています。
文部科学省 学習指導要領「生きる力」
=もくじ=
加法定理
加法定理は公式がたくさん出てきて覚えることが多く、さらにどの公式を使えばいいか分からず、苦労する人が多いと思います。しかし、一番基本的な公式から他の公式を導くことができるのでまずは基本的なところからおさえていきましょう。
正弦、余弦、正接の加法定理
正弦(sin)、余弦(cos)、正接(tan)の加法定理は以下のような公式です。
①正弦の加法定理
\(sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ\)
\(sin(α-β)=sinαcosβ-cosαsinβ\)
➁余弦の加法定理
\(cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ\)
\(cos(α-β)=cosαcosβ+sinαsinβ\)
③正接の加法定理
\(tan(α+β)=\frac{tanα+tanβ}{1-tanαtanβ}\)
\(tan(α-β)=\frac{tanα-tanβ}{1+tanαtanβ}\)
加法定理は上の6つの公式があります。他にも2倍角、半角、3倍角などの公式がありますが、上に書いた公式からすぐに求めることができるのでまずは基本となる公式を覚えましょう。
2倍角、半角の公式
加法定理の公式を使うことで2倍角の公式や半角の公式が求められます。加法定理の角度を足す方の公式にβにαを入れれば、2倍角の公式です。
2倍角
\(sin2α=2sinαcosα\)
\(cos2α=cos^2 α-sin^2 α\)
\(=1-2sin^2 α=2cos^2 α-1\)
\(tan2α=\frac{2tanα}{1-tan^2 α}\)
半角
\(sin^2 \frac{α}{2}=\frac{1-cosα}{2}\)
\(cos^2 \frac{α}{2}=\frac{1+cosα}{2}\)
\(tan^2 \frac{α}{2}=\frac{1-cosα}{1+cosα}\)
三角関数の合成
三角関数の加法定理を利用すると、\(asinθ+bcosθ\)を\(rsin(θ+α)\)の形に変形することができます。この変形を三角関数の合成といいます。

上の図のような点P( a , b )を考えます。線分OPの長さをr、線分OPとx軸のなす角をαとすると、
\(r=\sqrt{a^2+b^2},a=rcosα,b=rsinα\)
という式が成り立ちます。\(asinθ+bcosθ\)に対して、このa とb 、加法定理を使うと、
\(asinθ+bcosθ=rcosαsinθ+rsinαcosθ\)
\(rcosαsinθ+rsinαcosθ=r(cosαsinθ+sinαcosθ)\)
\(r(cosαsinθ+sinαcosθ)=rsin(θ+α)\)
\(rsin(θ+α)=\sqrt{a^2+b^2} sin(θ+α)\)
よって、
\(asinθ+bcosθ=\sqrt{a^2+b^2} sin(θ+α)\)
このとき、αは\(cosα=\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}},sinα=\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\)となるような値です。
このようにして三角形の合成は導くことができます。
和と積の変換公式
三角関数の積で表されているのを和に、和で表されているのを積に変換する公式があります。この公式は加法定理から導くことができ、使う頻度も高いのでしっかり押さえておきましょう。
積和公式
\(sinαcosβ=\frac{1}{2}\{sin(α+β)+sin(α-β)\}\)
\(cosαsinβ=\frac{1}{2}\{sin(α+β)-sin(α-β)\}\)
\(cosαcosβ=\frac{1}{2}\{cos(α+β)+cos(α-β)\}\)
\(sinαsinβ=-\frac{1}{2}\{cos(α+β)-cos(α-β)\}\)
和積公式
\(sinα+sinβ=2sin\frac{α+β}{2}cos\frac{α-β}{2}\)
\(sinα-sinβ=2cos\frac{α+β}{2}sin\frac{α-β}{2}\)
\(cosα+cosβ=2cos\frac{α+β}{2}cos\frac{α-β}{2}\)
\(cosα-cosβ=-2sin\frac{α+β}{2}sin\frac{α-β}{2}\)
よくある例題
加法定理についての例題をいくつか紹介していきます。
例題 (加法定理)
次の値を求めよ。
①\(sin75°\) ②\(cos\frac{π}{12}\)
解答
①加法定理より、
\(sin75°=sin(45°+30°)\)
\(=sin45°cos30°+cos45°sin30°\)
\(=\frac{1}{\sqrt{2}}⋅\frac{\sqrt{3}}{2}+\frac{1}{\sqrt{2}}⋅\frac{1}{2}\)
\(=\frac{\sqrt{2}+\sqrt{6}}{4}\)
②加法定理より、
\(cos\frac{π}{12}=cos(\frac{π}{3}-\frac{π}{4})\)
\(=cos\frac{π}{3}cos\frac{π}{4}+sin\frac{π}{3}sin\frac{π}{4}\)
\(=\frac{1}{2}⋅\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{\sqrt{3}}{2}⋅\frac{1}{\sqrt{2}}\)
\(=\frac{\sqrt{2}+\sqrt{6}}{4}\)
例題 (三角関数の合成)
\(-sinθ-\sqrt{3}cosθ\)を\(rsin(θ+α)\)の形に変形せよ。ただし、\(r>0,-π<α≤π\)とする。

解答
点P\((-1,-\sqrt{3})\)に対して、線分OPの長さrは、
\(r=\sqrt{(-1)^2+(-\sqrt{3})^2 )}=2\)
また、x軸とのなす角αは、
\(α=-\frac{2}{3} π\)
よって、
\(-sinθ-\sqrt{3}cosθ=2sin(θ-\frac{2}{3} π)\)
例題 (積と和の変換公式)
次の値を求めよ。
①\(sin15°cos105°\) ②\(sin15°sin75°\) ③\(cos15° + cos75°\)
解答
和と積の変換公式を使って変換してから値を計算しましょう。
解答
①
\(sin15°cos105°=\frac{1}{2}\{sin(15°+105°)+sin(15°-105°)\}\)
\(=\frac{1}{2}\{sin120°+sin(-90°)\}\)
\(=\frac{\sqrt{3}-2}{4}\)
②
\(sin15°sin75°=-\frac{1}{2}\{cos(15°+75°)-cos(15°-75°)\}\)
\(=-\frac{1}{2}\{cos90°+cos(-60°)\}\)
\(=\frac{1}{4}\)
③
\(cos15°+cos75°=2cos\frac{15°+75°}{2}cos \frac{15°-75°}{2}\)
\(=2cos45°cos(-30°)\)
\(=\frac{\sqrt{6}}{2}\)
苦手克服法
よくある悩み
三角関数の単元では、公式がたくさん出てきて覚えられない、といった人が多いと思います。特に加法定理では基本公式から半角、2倍角、三角関数の合成や積和、和積公式と公式が多くあり、覚えるのに苦労しますよね。さらに覚えたと思っても、いざ問題を解こうとすると、他の公式と混ざってしまうことがあると思います。
苦手を克服するには
加法定理では、公式がたくさん出てきますが2倍角や合成、積と和の公式も加法定理の基本の公式から導くことができます。なので公式が覚えられないという人や、ごっちゃになってしまうという人は、基本の公式だけは完璧に覚え、問題に応じて必要な公式を導くことをお勧めします。
加法定理攻略法
上にも書いた通り、加法定理では公式がたくさん出てきます。語呂合わせなどもいろいろあると思うので語呂合わせで覚えられればそれでよし。覚えられない人や覚えるのが嫌だという人は基本の公式から導き出せるようにしましょう。覚えられる人も公式があっていたか不安になった時のために基本の公式から導き出せるようにしておくといいと思います。この三角関数という単元では、公式を使いこなせるようになっておく必要があるので、公式を覚えたら練習問題をこなすようにしましょう。