数学が苦手なお子さんは中学、高校とも学年が上がっていくごとに増えていきますよね。今回は高校数学の中でも数学IIIの極限について書いていきたいと思います。この分野の問題は極限の計算問題がほとんどですが、極限を求めるために少し変わった式変形をすることがあります。この分野の内容は微分や積分の内容と深く関わってくるのでしっかりと計算できるようにしましょう。
あすなろには、毎日たくさんのお悩みやご質問が寄せられます。
この記事は数学の教科書に基づいて高校生のつまずきやすい単元の解説を行っています。
文部科学省 学習指導要領「生きる力」
数列とその極限
数列がある値に限りなく近づくとき、その値のことを数列の極限または極限値といいます。極限を考えるときに重要になってくるのが収束と発散です。例えば数列で番号が進むにつれて数列の項がある値に限りなく近づいていく場合、その数列は収束するといいます。収束しせずにどんどん大きくなっていったり、正負に振動したりする数列は発散するといいます。
数列の極限
数列の極限を計算する前にまず、数列の収束・発散と極限の関係についてまとめておきます。
①\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha \)となる場合、数列は収束し、極限値があります。
②\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \infty \)となる場合、数列は発散し、極限は正の無限大、極限値はありません。
③\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = – \infty \)となる場合、数列は発散し、極限は負の無限大、極限値はありません。
④数列が振動する場合、数列は発散し、極限はありません。
数列の極限を考える場合は必ず上の①~④のどれかに当てはまります。なので数列の極限を求めよ、という問題の解答は極限値、正の無限大、負の無限大、極限なしの4パターンになります。計算するときは、一番簡単な場合だと、数列の一般項のnに無限大を代入して計算する、といった計算になります。
次に数列の極限を計算するときに使える性質があるのでいくつか紹介していきます。2つの数列\( \{ a_n \} , \{ b_n \} \)が収束して、\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha , \lim_{n \to \infty} b_n = \beta \)のとき、
\(
\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_n + b_n) = \alpha + \beta \\
\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_n – b_n) = \alpha – \beta \\
\displaystyle \lim_{n \to \infty} ka_n = k \alpha \\
\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n b_n = \alpha \beta \\
\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n} = \frac{\alpha}{\beta}
\)
また、極限を計算すると、形式的に「\( \infty – \infty \)」「\( 0 \times \infty \)」「\( \displaystyle \frac{\infty}{\infty} \)」「\( \displaystyle \frac{0}{0} \)」といった形の極限を不定形の極限といいます。このような形のままでは極限がわからないので、極限を求められるように式変形をする必要があります。
無限等比級数
項が限りなく続く数列を無限数列といい、記号\(\{a_n\}\)で表します。数Ⅲでは、単に数列といえば、無限数列のことをいいます。この中で無限等比数列は数Bでやった等比数列の項が無限に続いていく数列です。無限等比級数はこの無限等比数列の和のことです。数Bでは初項から第\(n\)までの和の公式\( \displaystyle S_n = \frac{a(1-r^n)}{1-r} \)が出てきたと思いますが、この\(S_n\)は極限の単元では無限級数の部分和といいます。この部分和について極限を考えるのが無限等比級数です。なので無限等比級数を求める流れとしては、まず部分和を求めてその部分和の極限を考えるという流れになります。
例題
数列の極限についての例題をいくつか紹介していきます。
例題 (数列の極限)
次の数列の極限を求めよ。
①\( \displaystyle \{ n-4 \} \)
②\( \displaystyle \{ \frac{2n+1}{n} \} \)
解答
①
\( n \to \infty \)としたとき、\( n-4 \to \infty \)となり、正の無限大に発散する。
②
\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{2n+1}{n} = \lim_{n \to \infty} \frac{\frac{2n}{n}+ \frac{1}{n}}{\frac{n}{n}} = \lim_{n \to \infty} \frac{2 + \frac{1}{n}}{1} = 2 \)
例題 (無限等比級数)
次の無限等比級数の収束、発散を調べ、収束する場合はその値を求めよ。
①\( 5-5+5-5+ \cdots \)
②\( \displaystyle \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{6^n} cosn \pi \)
解答
①
公比が\( -1 \)なので発散する。
②
\( \displaystyle \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{6^n} cosn \pi = \sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^n}{6^n} = \sum_{n=1}^\infty (-\frac{1}{6})^n \)
よって、公比は\(-\frac{1}{6}\)で\( |-\frac{1}{6}| < 1\)なので収束し、和は
\(
\displaystyle \frac{-\frac{1}{3}}{1-( -\frac{1}{3} )} = – \frac{1}{4}
\)
数列の極限攻略法
この単元で出てくる問題は、ほとんどが計算問題です。しかし、他の単元ではやらないような式変形をするので練習問題をこなしてなれるようにしましょう。数列の極限の分野では数列の極限と無限級数が出てくるので2つを一緒にしないように違いを整理しましょう。